梅雨の過ごし方 食養生
梅雨を健やかに乗り切るために〜体と心を整える食養生〜
しとしとと雨が続く梅雨の季節。
湿度が高く、気温や気圧の変化が激しいこの時期は、知らず知らずのうちに心と体に不調を感じやすくなります。
「だるさが抜けない」「頭が重い」「食欲が落ちている」
お客様や料理教室の受講生さんから…そんな声もよく耳にします。
でも、そんな時こそ、私たちの暮らしの中にある“食”の力を見直してみませんか?
自然と調和し、季節の変化に寄り添うことで、体も心も軽やかになっていきますよ。

1.梅雨時期に起こりやすい不調とは?
梅雨は中医学(東洋医学)でいうところの「湿邪(しつじゃ)」が強まる時期。
この“湿”が体の中にたまると、以下のような不調が起こりやすくなります。
- 体が重だるい、やる気が出ない
- 頭痛・めまい・不眠
- 食欲不振・胃もたれ・下痢
- むくみ・関節痛
- カビや細菌による食中毒や皮膚トラブル
これらは、体の「水の巡り」が悪くなっているサイン。
梅雨の間は、いかに“巡らせて”、“余分な水を出すか”が、養生の鍵となります。
2.梅雨におすすめの「巡らせる」食養生
●酸味と香りで「気」を巡らせる
梅干し・らっきょう・新しょうが・酢・柑橘類など、酸味や香りのある食材は、滞りがちな気の巡りを促し、食欲を引き出してくれます。
特に梅干しは、殺菌効果もあり、体を引き締めて余分な水分を排出する働きも。
おすすめは「梅干し入り番茶」や「梅酢を使った和え物」。
香り高い山椒や紫蘇も、この時期には積極的に取り入れたい食材です。
●冷える日には、身体を温めて
気温差で思いがけず冷える日もあります。
梅雨の冷えは“内臓から”。
きゅうりやトマトなどの“冷やす”食材は、生食を控えめに。
冷たい飲み物や生ものは控えめにし、温かいスープや味噌汁を基本にしましょう。
- 生姜入りのお味噌汁
- 具だくさんのスープ(重ね煮がおすすめ)
- らっきょうや玉ねぎ、にんにくなど、体を温める野菜
温性の食材で、体の芯から湿を飛ばしていきましょう。
●暑い日には、熱をこもらせない工夫を
湿気と暑さで熱がこもると、だるさや頭重感の原因に。
香辛料や香味野菜で発汗を促し、体の熱を逃がしましょう。
●ハトムギ茶(梅雨の食養生に役立つ理由)
- 利尿作用で「湿」を排出
体にたまった余分な水分を尿として排出し、むくみや重だるさを改善します。 - 消化を助ける
脾(胃腸)の働きを整え、湿気で弱りがちな消化機能をサポートします。
→ 食欲不振・胃もたれの改善に◎ - 肌の調子を整える
古くから「肌をきれいにするお茶」として親しまれ、ニキビや湿疹、吹き出物が出やすいこの季節にも役立ちます。 - ノンカフェインで体にやさしい
日常の水分補給として安心して飲めるのも魅力です。
おススメの飲み方
- 朝の白湯代わりに温かいハトムギ茶
- 冷やしすぎない常温かぬるめで、体を冷やしすぎないように
- 食事と一緒に飲むと、消化を助ける効果もUP
- 妊娠中の方は、大量摂取を避け、念のため医師に相談を。
3.抗菌・防腐の知恵で食中毒予防
梅雨は食べ物が傷みやすく、食中毒にも注意が必要です。
昔からこの時期に「梅干し」「らっきょう」「新生姜」などの保存食が作られてきたのも、理にかなった食養生。
●梅干し:乳酸菌やクエン酸が腸内環境を整え、疲労回復にも◎
●らっきょう:アリシンが抗菌作用を持ち、腸を整えてくれる
●新生姜:血行促進・防腐・殺菌作用も高く、薬味にもぴったり
「旬をいただき、保存していく」ことで、身体も家も元気になります。
4.心の巡りも大切に
梅雨の湿気は、身体だけでなく心にも影響を与えます。
何となく気分が沈んだり、眠りが浅くなったりしやすい時期。
だからこそ、深呼吸や軽いストレッチ、散歩などで「気の巡り」を意識してみましょう。
また、よもぎ湯やミントティー、山椒の香りなど、自然の香りは心を整えてくれます。
お風呂に天然のハーブを浮かべるだけで、心がふっと緩む瞬間が生まれますよ。
5.暮らしの中に「梅雨の手仕事」を
この季節にこそ楽しめる「保存の手仕事」も、実は立派な養生のひとつ。
梅干し作りやらっきょう漬け、杏のジャムや紫蘇ジュース…。
五感を使って、自然と向き合うひとときは、心の梅雨も晴らしてくれますよ。
我が家では、出来るだけ季節の手仕事を子供や孫たちと一緒にやっています。
今年は5Kgの梅を塩漬けにしました。
一番小さい2歳の孫が、焼酎をまぶした梅を塩と一緒に袋に詰めていく作業に夢中になり、
5kgすべてを漬け終えたあとも、「もっとやりたい!」と目を輝かせて、大人たちを驚かせました。
小さな子どもが季節の手仕事にふれ、大人になったときに自然とそれを受け継いでくれる。
そんなふうに、暮らしの知恵や文化がつながっていったらうれしいな、としみじみ感じました。

まとめ:季節に寄り添い、整えていく暮らし
現代の便利な生活の中でも、こうして季節の変化を感じ取り、自分を整えていくことができます。
梅雨は「陰」の気が強まりやすい時期。だからこそ、ちょっと意識して「陽」を取り入れてみてください。
- 温かい食事と香りのある食材
- 湿を出し、気を巡らせる生活
- 手を動かして、自然に触れる喜び
そんな梅雨の過ごし方が、夏を元気に迎える力となってくれることでしょう。